炭酸カルシウム粉末は、化学式CaCO₃で表される天然に豊富に存在する鉱物化合物であり、その多用途性、低コスト性、環境にやさしい性質から、さまざまな業界において主要素材となっています。海洋生物の堆積作用や化学的沈殿作用などの地質学的プロセスによって形成されるこの物質は、主に3つの結晶構造を持ちます。すなわち、最も安定で菱面体形状の「方解石（ほうかいせき）」、高圧下で形成される針状の「霰石（あられせき）」、希少で球形かつ準安定な「バータイト」です。このような構造の多様性により、粗粒の骨材から100ナノメートル未満のナノスケール粉末まで、特定の用途に応じたカスタマイズが可能です。
物理的には、高白度（通常は反射率90～98％）、低吸湿性、優れた分散性を持ち、さまざまなマトリクスに容易に統合できます。化学的に不活性であり、塩酸などの強い酸を除けばほとんどの酸や有機溶媒と反応しないため、過酷な環境下でも安定性を維持します。モース硬度は3で粉砕が容易であり、さらに高い耐熱性（825°C以上で分解する）を持つため、高温プロセスにも適しています。
建設業界では、セメントやコンクリートの主要成分として使用され、圧縮強度を高めるとともに養生時間を短縮します。ボードの充填材としては、作業性や耐火性を向上させる効果があります。製紙業界では印刷用紙の不透明度や明るさを高めるために使用され、木材パルプの最大30％まで置き換えることで製造コストを削減します。プラスチック分野では、PVC管を補強し、ポリプロピレン包装材の耐衝撃性を高め、成形品の収縮を低減する効果があり、原材料費の削減にも貢献します。
塗料およびコーティング剤は、その耐洗浄性の向上、光沢の調整、被覆面積の延長という特性から利益を得ます。食品グレードの炭酸カルシウムは、ベーカリー製品や乳製品において栄養添加剤として使用され、医薬品グレードは制酸剤および錠剤の結合剤として用いられます。農業用途としては、土壌改良による酸度の中和や、家畜飼料におけるカルシウム補給源として使用されます。
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